大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 昭和44年(行ク)4号 決定 1969年5月16日

申立人

ポール・イー・サイモンこと

ダニエル・デイ・デニス

右代理人

小野誠之

崎間昌一郎

被申立人

検察官検事

細川顕

申立人は、昭和四四年五月一五日午前一一時〇〇分、当裁判所に対し、「被告は原告に対し、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づお施設及び区城並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法(以下刑事特別法と略称)第一八条第一項、第三項に基づく逮捕権、合衆国軍隊への引渡権を有しないことを確認する。」旨の判決を求める処分権不存在確認の訴えを提起し昭和四四年(行ウ)第二一号事件)、あわせて、本件執行停止の申立をしたので、当裁判所は、(被申立人の意見をきいた上、被申立人意見書提出日時、同日午後七時三〇分)つぎのとおり決定する。

主文

本件申立を却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

一、申立人の申立の趣旨および理由別紙のとおり。

二、被申立人の意見 別紙のとおり。

三、当裁判所の判断

被申立人は、申立人がキャンプ座間アメリカ合衆国陸軍極東人事本部所属の陸軍一等兵であることが判明したので、昭和四四年五月一五日午後二時四〇分、申立人を釈放し、その直後、京都府警察本部司法警察員は、アメリカ合衆国軍隊からの逮捕要請に基づき、刑事特別法第一八条により、申立人を逮捕し、アメリカ合衆国軍隊に引渡した。(右引渡後被申立人は、意見書を提出した。)

上記のとおり、申立人がアメリカ合衆国軍隊に引渡された現在、本件執行停止の必要性がないことは明白でおる。

よつて、その余の判断を省略し、本件申立を却下し、申立費用につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり決定する。(小西勝 山本博文 寒竹剛)

一 申立人の申立の趣旨および理由

(京都地裁昭和四四年(行ク)第三号事件の申立人の申立の趣旨および理由と同じ。ただし、申立の理由(一)の(2)の末尾の「緊急逮捕され、」と「現在川端署に留置されているところである。」との間に、「その後昭和四四年五月一四日午後三時頃検察官検事細川顕に送致され、」を加える。)

二 被申立人の意見

本件申立人ポール・E・サイアモンは昭和四四年五月一二日午後三時川端警察署司法警察員において別紙出入国管理令違反第七〇条第五項の容疑により緊急逮捕し、同月一四日、午後二時五〇分当庁に対し身柄拘束のまま、送致されたものであるところ、捜査の結果被疑者はキャンプ座間米陸軍極東人事本部所属の米陸軍一等兵で本名はダニイ・D・デニス(兵籍番号RA一六九九〇六五〇)なることが判明し、犯罪の嫌疑がないと認められるに至つたので同月一五日午後二時四〇分釈放した。

申立の趣旨である刑特法第一八条第一項第三項に基づく逮捕引渡については、検察官は全く関与しておらず訴の名宛人たり得ないものであるから本件申立は不適法として却下されるべきものである。

おつて被疑者に対しては当職において前記釈放した後京都府警本部において、米軍からの逮捕要請に基づく刑特法第一八条により逮捕した上米軍側に引渡している。

〔別紙〕

被疑者はアイルランド国籍を有する外国人であつて昭和四三年四月八日頃観光の目的で東京港から本邦に上陸し旅券記載の在留期間である昭和四三年一〇月八日まで在留した上、東京入国管理事務所において昭和四四年四月八日まで在留期間の更新を受けたものであるが、その後右在留期間の更新を受けないで同年五月一二日まで京都市左京区吉田下大路町二五番地臼井直一方に居住し、もつて旅券に記載された在留期間の経過して本邦に在留したものである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例